「オスワリもマテもできるのに、散歩になると引っぱってばかり」
「教わった通りにやっているのに、なんだか毎日がしんどい」
「トレーニングって、どこまでやればいいんだろう」
DogRelaxingには、こうしたご相談がよく届きます。
一生懸命なご家族ほど、「できること」を増やすことに力が入り、いつのまにか犬も人も疲れてしまうことがあります。
先に結論をお伝えします。
私たちは、すべてのトレーニングは、犬とその家族のウェルネスのためにあると考えています。
この記事では、トレーニングを「何のためにするのか」を、あらためて一緒に考えてみたいと思います。

トレーニングというと、「指示に従えるようにすること」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん、オスワリやマテは暮らしの中でとても役に立ちます。道路の手前で止まれる、来客のときに落ち着いていられる。安全のためにも大切な力です。
でも、「指示に従わせること」そのものが目的になってしまうと、少しずつ苦しくなっていきます。
できないと叱る、できるまで繰り返す。犬は緊張し、家族はイライラする。「ちゃんとできているはずなのに、なぜか関係がぎくしゃくする」という状態は、ここから生まれます。
トレーニングは手段であって、ゴールではありません。ゴールはその先にある、犬と家族が心地よく暮らせることです。

では、犬にとって「心地よく暮らせる」とは、どんな状態でしょうか。私たちは、犬のウェルネスを次のように考えています。
どれも、「オスワリができる」「マテが長くできる」といった"できること"の数では測れません。
たくさんの合図ができても、いつも緊張していて休めない犬は、満たされているとは言えないでしょう。反対に、できることは少なくても、家の中でゆったりくつろぎ、散歩を楽しめている犬は、心も体も健やかです。
トレーニングは、こうした心と体の土台を支えるためにあります。

そしてもうひとつ、忘れてほしくないことがあります。それは、ご家族自身のウェルネスです。
こんな毎日が続くと、犬との暮らしそのものが重たく感じられてしまいます。
犬は、家族の気持ちにとても敏感です。家族が疲れていたり余裕がなかったりすると、その空気は犬にも伝わります。
だからこそ、トレーニングは犬のためだけではなく、ご家族が楽になるためのものでもあるのです。
「散歩が楽しみになった」「家で一緒にくつろげるようになった」。そんな家族の変化も、トレーニングの大切な成果です。

目的を意識すると、同じトレーニングでも中身が変わってきます。
たとえばオスワリ。飛びつきを止めるために、強い声で「オスワリ!」と言う。それもひとつの使い方です。
でも、オスワリを教えるときに犬の気持ちにも目を向けると、教え方は変わってきます。落ち着いた環境で練習し、できたことを穏やかにほめる。そうした経験を積み重ねることで、犬は安心して人の合図に応じられるようになります。大切なのは、ただ座らせることではなく、犬がどんな気持ちでその行動をしているかにも目を向けることです。
爪切りや歯みがきも同じです。押さえつけて終わらせることもできますが、それでは犬は体を触られることがどんどん苦手になってしまいます。
少しずつ触られることに慣れ、「触られても大丈夫」と感じられるように練習していけば、ケアの時間は犬にとっても家族にとっても、ずっと楽なものになります。
なぜ犬がケアを嫌がるのか、どうすれば「安心」に変えていけるのかは、犬がケアを嫌がる理由で詳しく解説しています。また、具体的な練習方法については足先を触られる練習、健康との関係については犬の口腔ケアと全身の健康も参考にしてください。
何を教えるか以上に、何のために教えるかが、犬の受け取り方を変えるのです。
もし今、トレーニングがうまくいかないと感じていたら、一度立ち止まって、こんなふうに問いかけてみてください。
問い直してみると、「実はそこまでこだわらなくてもいい」ことが見つかるかもしれません。すべてを完璧にできる必要はありません。その子と家族の暮らしに必要なことを、必要なだけ。それで十分です。
反対に、「これは愛犬の安心のために、しっかり取り組みたい」と思えることもはっきりしてきます。目的がはっきりすると、続ける力も湧いてきます。

犬育て.jpは、「犬と人が、共に育つ社会へ。」という思いから始まりました。
トレーニングは、人が犬に一方的に教えるものではありません。犬の気持ちを知ろうとする中で、家族も学び、変わっていきます。家族が変わると、犬も安心して、新しいことに挑戦できるようになります。
「家族が変わると、犬も変わる」。そう実感する場面が、日々のご相談の中にもあります。
DogRelaxingには、「散歩中にほかの犬を見ると吠えてしまう」というご相談がよく寄せられます。
たとえば、ほかの犬とすれ違うたびに吠えてしまい、何とかやめさせようと「ダメ!」と声をかけたり、リードを引いて離れようとしたりするご家族もいらっしゃいます。
それでも吠えはなかなかおさまらず、散歩に出かけること自体が負担になってしまうこともあります。
こうした場合、私たちは吠えることだけに注目するのではなく、どのような場面で、なぜ吠えるのかを一緒に考えていきます。
たとえば、ほかの犬が遠くにいるときは落ち着いていられるのに、距離が近づくにつれて緊張が高まり、吠えてしまうことがあります。
そのような犬に必要なのは、無理に吠えることをやめさせるトレーニングではなく、安心できる距離を保ちながら、ほかの犬がいても落ち着いて過ごせる経験を積み重ねることかもしれません。
ご家族にも、ほかの犬との距離を意識し、愛犬の様子を見ながら散歩することをお伝えしています。犬の反応に合わせて環境や接し方を変えていくことで、少しずつ落ち着いて歩ける場面が増えていきます。ご家族も、散歩を安心して楽しめるようになっていきます。
「言うことを聞かずに吠える子」ではなく、「ほかの犬が近づくことに不安を感じていたのかもしれない子」。そんなふうにご家族の見方が変わることで、愛犬への接し方も変わり、犬の行動にも変化が生まれていきます。
そうやって、犬と家族がお互いに育ち合っていく。その時間そのものが、ウェルネスなのだと思います。
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トレーニングの目的は、その子の性格や年齢、ご家族の暮らし方によって一つひとつ違います。
DogRelaxingでは、ご家族と一緒に暮らしの中の困りごとを見直すご家族レッスンや、心と体の健やかさを育てる犬育てウェルネスで、犬とご家族のウェルネスをサポートしています。
「叱る」ではなく「育てる」考え方をもっと知りたい方は、『犬育ての教科書』もどうぞ。
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