DogRelaxingで犬と飼い主さんに接するなかでも、「愛犬がごはんを食べてくれない」というご相談を多く伺います。
「フードに飽きたのでしょうか」「わがままですか」「食べるまで待ったほうがよいですか」と悩む飼い主さんも少なくありません。
私たちにも、「今日はあまり食べなくてもいい」「少量で十分」「さっぱりしたものが食べたい」と感じる日があります。犬も、その日の体調や運動量、気温、疲れ、気持ちの変化によって、食欲が一定ではないことがあります。
ただし、犬は「胃が重い」「口が痛い」「食べると気分が悪くなる」と言葉では伝えられません。
食べないことを、すぐに「飽きた」「わがまま」と決めつけず、体調、食事環境、過去の経験、食事の提供方法などから原因を考えてみましょう。
最初に確認したいのは、体調不良や痛みの可能性です。
食べたそうにしているのに口からこぼす、途中でやめる、片側だけで噛むといった様子がある場合は、「食べたくない」のではなく「食べたいけれど食べられない」のかもしれません。

食欲だけでなく、元気、便、水分摂取、口の状態なども一緒に確認しましょう。
散歩や遊びが少なかった日は、消費するエネルギーも少なくなります。そのため、いつもと同じ時間になっても、犬が十分に空腹を感じていないことがあります。
雨や暑さで外出が減った、留守番が長かった、生活リズムが変わったなど、最近の活動量も振り返ってみましょう。

ただし、食べさせるために急に激しい運動をさせたり、食事の直前や直後に走らせたりするのは避けます。
散歩、匂い嗅ぎ、室内遊びなど、その犬の年齢や体調に合った活動を日常的に取り入れましょう。
犬は、周囲を警戒していると落ち着いて食べられないことがあります。
食べ物を変える前に、静かな場所や違う形の食器で反応を確認する方法もあります。
犬は過去の経験から、ごはんと不快な出来事を結びつけることがあります。
たとえば、ごはんを食べたあとにお腹が痛くなった、吐き気がした、フードに薬が混ぜられていた、食事中に苦手なお手入れをされたといった経験です。

フードが体調不良の直接的な原因ではなくても、犬がその匂いや味、食器、食事場所と不快感を結びつけ、「これを食べると、また嫌なことが起きる」と避ける場合があります。
これは、わがままというより、自分を守るために身についた反応とも考えられます。
ただし、本当に腹痛や吐き気が続いている可能性もあります。「嫌いになっただけ」と判断せず、ほかの体調変化も確認しましょう。
犬がごはんを食べないとき、私たちは次のように考えがちです。
しかし、同じであることが、そのまま飽きる原因になるとは限りません。決まった食器、食事、時間は、犬にとって安心できる生活リズムにもなります。
一方で、食器の音や深さ、材質が苦手だったり、食事場所が落ち着かなかったりすることはあります。また、運動量や体調の変化によって、いつもの時間に空腹になっていない可能性もあります。

「飽きた」と決めつけて次々にフードを変える前に、お皿・食べ物・時間・場所・体調を一つずつ確認してみましょう。
いつものごはんを食べないたびにトッピングや好物を追加していると、犬が「今は食べずに待てば、もっと好きなものが出てくる」と学習する場合があります。
だからといって、食べるまで何も与えず、犬との根比べをすればよいとは限りません。
好物は食べるのか、元気や便に変化はないか、食事環境に問題はないかを確認し、体調不良の可能性を先に考えましょう。
人にも、食欲が強い日と、それほど食べたくない日があります。
犬も、その日の活動量、気温、疲れ、緊張、胃腸の状態などによって、食欲の強さが変わることがあります。

一度いつもの量を食べなかったという結果だけで、すぐにわがままと判断する必要はありません。
ただし、犬は自分の不調を言葉で説明できません。いつもと違う食べ方が続いていないか、ほかの変化がないかを観察することが大切です。
犬にとって食事は、器に入ったフードを食べるだけのものではありません。
食べ物の匂いを嗅ぎ、探し、鼻や口、前足を使って手に入れるまでの一連の行動を「採食活動」といいます。
いつもの食事の一部を使って、次のような楽しみ方を取り入れることもできます。

環境エンリッチメントとは、犬が本来持っている「嗅ぐ・探す・噛む・考える・体を動かす」といった行動を楽しめるように、暮らしの環境や過ごし方を工夫することです。
食べ物を探したり、考えながら取り出したりする採食活動も、環境エンリッチメントの一つです。食欲を無理に刺激するのではなく、食べるまでの過程を楽しめるようにします。
ただし、難しすぎる方法は犬の負担になることがあります。簡単に見つけられる方法から始め、その犬が楽しんでいるかを見ながら調整しましょう。
エンリッチメントは、食べない犬へ難しい課題を与え、無理に食べさせるためのものではありません。また、散歩や適切な運動の代わりになるものでもありません。
ここまで、犬がごはんを食べない主な原因を紹介してきました。ただ、「食べない」という結果だけでは、原因を見分けにくいこともあります。
そこで注目したいのが、どのように食べなかったのか、ほかにどんな変化があるのかという点です。その見方の一例として、東洋医学の一つである中医学の考え方も紹介します。
中医学では、食欲や消化に関わる「脾」と「胃」の働きに注目するそうです。
ここでいう脾は、西洋医学の脾臓ではありません。胃が「食べ物を受け取る場所」なら、脾は「受け取った食べ物を消化・吸収し、体を動かす力に変えて全身へ届ける係」と考えられています。
脾の働きが弱ると、食欲の低下だけでなく、軟便、お腹の張り、疲れやすさ、冷えなどが現れることがあるそうです。
そのため、食べたそうなのに少ししか食べない、においを嗅いで離れる、食後にお腹が張るといった食べ方の違いに加え、便、元気、季節、生活環境なども手がかりにします。
家庭では、「食べた・食べなかった」だけでなく、食べ方や食後の様子、便、元気などを記録してみましょう。
中医学では、体の冷えも手がかりの一つにするそうです。暖かい場所を好む、体を丸めて眠るといった様子があれば、犬が落ち着いているときに肉球やお腹へそっと触れ、普段より冷たくないかを確かめてみます。
いつもより冷たく感じるときは、床からの冷気を避け、室温や寝床を穏やかに暖かくしてみましょう。肉球は床や外気の影響も受けるため、一度の感触だけで判断せず、ほかの変化とあわせて見ます。
こうした観察を獣医師に伝えることで、食事の見直しや、必要に応じて漢方・鍼灸などを検討する手がかりにもなるそうです。
「食べない」という結果だけでなく、食べ方や食後の変化まで見る。こうした考え方も、犬の小さな変化に気づくヒントになるかもしれません。
食欲低下に嘔吐、下痢、痛み、元気の低下などが伴う場合は、まず動物病院を受診し、西洋医学的な診察や検査で病気と緊急性を確認します。
検査で大きな異常が見つからないのに食欲不振を繰り返す場合や、体質・食事・生活全体から見直したい場合は、次の選択肢として、中医学や統合医療を取り入れている獣医師へ相談する方法もあります。
急な症状は、まず西洋医学的な診察。慢性的・反復的な悩みには、中医学の視点も補助的に取り入れる。この順序で考えると分かりやすくなります。
犬がごはんを食べない理由は、わがままだけではありません。体調や運動量、食事環境、過去の経験などを確認し、「なぜ今は食べたくないのだろう」と考えてみましょう。
体調に問題がなければ、嗅ぐ・探す・考える採食活動を取り入れ、その犬が安心して楽しく食べられる方法を探すことも大切です。
本記事は、犬の食欲低下に関する獣医学的情報、採食エンリッチメント、中医学における「脾・胃」の資料を参考にまとめています。
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