ひととの関わり

子犬の甘噛みはいつまで?叱る前に知りたい理由と「噛んでいいもの」の教え方

2026.10.18 | 追杉雄介(犬育てトレーナー)

「手を出すと、すぐにカプッと噛んでくる」

「服の裾やスリッパを追いかけて離さない」

「『ダメ!』と言うほど、余計に興奮して噛んでくる」

子犬を迎えたご家庭から、DogRelaxingに最も多く寄せられるご相談のひとつが甘噛みです。

小さな歯は思った以上に鋭く、手が傷だらけになってしまう方も少なくありません。

先に結論をお伝えします。

子犬が噛むこと自体は、悪いことではありません。

大切なのは「噛ませないこと」ではなく、

「噛んでいいもの」と「噛まないで過ごす方法」を、子犬にわかる形で教えていくこと

です。

この記事では、子犬が甘噛みする理由と、叱っても止まらない理由、そしてご家庭でできる向き合い方を順番にお話しします。

子犬が甘噛みするのはなぜ?

おもちゃを噛んで確かめる子犬

甘噛みにはいくつかの理由があります。ひとつだけのこともあれば、いくつかが重なっていることもあります。

1. 口で世界を知っている

人の赤ちゃんが何でも口に入れるように、子犬も口を使って周りのものを確かめます。

硬いのか、やわらかいのか、動くのか。噛むことは、子犬にとって大切な探索のひとつです。

2. 歯の生え変わりでむずむずする

子犬の歯は、生後4か月ごろから永久歯へ生え変わり始め、6〜7か月ごろに生えそろうのが一般的です。

この時期は歯ぐきがむずむずして、いつも以上に何かを噛みたくなります。

3. 遊びの中で力加減を学んでいる

子犬は本来、母犬や兄弟犬とじゃれ合いながら「これくらい噛むと相手が嫌がる」という力加減を覚えていきます。

家庭に来てからは、その相手が家族になります。人の手に向かってくるのは、子犬にとっては遊びに誘っているつもりのことが多いのです。

4. 興奮しすぎている、眠い

DogRelaxingの現場で特に多いのが、このケースです。

遊びが盛り上がりすぎたときや、本当は眠いのに休めていないとき、子犬は気持ちを自分で落ち着けられず、噛む行動が強くなります。

夕方や寝る前に急に噛みが激しくなる子は、まず疲れや眠気を疑ってみてください。

5. 噛むと「いいこと」が起きると学んでいる

手を噛むと、人が声を上げる。手をひらひらさせる。追いかけっこが始まる。

これが繰り返されると、子犬は「噛むと遊んでもらえる」と学習します。

叱っているつもりの「コラ!」も、子犬には「反応してもらえた」と映っていることがあります。

叱っても甘噛みが止まらない理由

遊びに誘うように興奮する子犬

噛まれたら「ダメ!」と叱る。多くの方が最初にやることだと思います。

でも、叱っても噛む回数が減らない、むしろ増えたというご相談は珍しくありません。

子犬には「なぜ叱られたか」が伝わらない

子犬にとって、目の前のものを噛むのは自然な行動です。「人の手は噛んではいけない」というルールは、まだ知りません。

そこへ大きな声が飛んでくると、子犬が受け取るのは

「なんだかわからないけど、この人の様子がいつもと違う」

ということだけです。

叱る声が、遊びの盛り上げ役になる

興奮して噛んでいる子犬に高い声で叱ると、その声や手の動きがさらに興奮を高めてしまうことがあります。

人は止めているつもりでも、子犬には「一緒に盛り上がってくれた」と映っているのです。

手そのものが怖いものになる

叩く、口を強くつかむといった対応を続けると、子犬は人の手を怖いものとして覚えることがあります。

そうなると、触られることを嫌がったり、怖さから本気で噛むようになったりと、別の困りごとにつながりかねません。

叱ることについての考え方は「「叱る」より「育てる」犬育ての考え方」でも詳しくお伝えしています。

甘噛みとの向き合い方|DogRelaxingで大切にしている6つのこと

甘噛みは「やめさせる」より、噛まなくても満たされる毎日をつくるほうが近道です。

1. 「噛んでいいもの」をいつも用意しておく

噛みたい気持ちそのものを止めることはできません。だからこそ、噛んでいい場所を先に用意します。

  • 硬さや形の違うおもちゃを数種類
  • 毎日同じものではなく、入れ替えながら出す
  • 子犬の口に入りきらない、誤飲しにくい大きさ

おもちゃを噛んでいたら、静かに「いいね」と声をかけてあげてください。噛むこと自体を認めてもらえる経験が、噛む先を手からおもちゃへ移していきます。

迎える準備については「犬を迎える前に買い揃えておきたいもの」も参考にしてください。

2. 手で遊ばない

手をひらひらさせて子犬をじゃらす遊びは、とても楽しそうに見えます。

でも子犬にとっては、「人の手は噛んで遊ぶもの」という練習になってしまいます。

遊ぶときは、長めのロープやおもちゃを間に入れて、手と子犬の口の間に距離をつくりましょう。

ロープのおもちゃで飼い主と遊ぶ子犬

3. 噛まれたら、静かに遊びを止める

手を噛まれたときは、大きな声を出さずに、

手の動きを止める → そっと手を引く → 数秒、遊びを中断する

ようにします。

子犬が落ち着いたら、おもちゃを差し出して遊びを再開します。

これを繰り返すと、子犬は「手を噛むと楽しい時間が止まる」「おもちゃを噛めば続く」と少しずつ学んでいきます。

「痛い!」と高い声を出す方法もよく紹介されますが、その声でかえって興奮する子もいます。迷ったら、静かに止める方法を選んでください。

4. 盛り上がりすぎる前に、人が遊びを終える

噛みが強くなるのは、たいてい遊びが盛り上がりすぎたときです。

遊びは「さあ、遊ぼうか」と人が始め、子犬がいちばん楽しそうなうちに「はい、おしまい」と人が終える。

この始まりと終わりを人がつくる習慣は、『犬育ての教科書』でもお伝えしている、落ち着きを育てる大切な土台です。

5. しっかり眠れる時間と場所をつくる

子犬は1日の多くの時間を眠って過ごします。寝不足の子犬は、人の子どもと同じようにぐずり、噛みが強くなります。

クレートやサークルの中に、誰にも邪魔されずに休める場所をつくりましょう。

噛みが止まらないときに静かな場所で休ませるのは、罰ではなく「眠かったんだね」と気持ちを切り替える手助けです。

クレートの中で眠る子犬

安心して休める力については「「オスワリ」より先に育てたいもの」でも詳しくお伝えしています。

6. 家族みんなで対応をそろえる

お父さんは手で遊ばせる、お母さんは叱る、子どもは逃げ回る。これでは子犬は、何が正解なのかわかりません。

「手では遊ばない」「噛まれたら静かに止める」といった対応を、家族でひとつに決めておきましょう。

家族のルールのそろえ方は「家族みんなで揃えたい 愛犬との暮らしのルール」をご覧ください。

やめておきたい対応

インターネットや昔ながらのしつけでは、次のような方法が紹介されていることがあります。DogRelaxingではおすすめしていません。

  • 叩く、鼻先を指ではじく:手が怖いものになり、触られることを嫌がる原因になります
  • マズル(口)を強くつかむ、口に手を入れる:噛む力を強めたり、口元のケアが苦手になったりします
  • 仰向けにして押さえつける:「上下関係を教える」という考え方は、今では多くが否定されています。犬が求めているのは支配ではなく安心です
  • 噛んだら大声で追いかける:追いかけっこという楽しい遊びになってしまいます

どれも、その場では噛むのが止まったように見えることがあります。でもそれは「わかった」のではなく「怖くて止まった」だけかもしれません。

甘噛みと、気をつけたい噛み方の違い

子犬の噛み方の多くは、遊びや探索からくる甘噛みです。ただ、なかには理由を見直したほうがいい噛み方もあります。体のサインで見分けます。

見るところ遊びの甘噛み気をつけたい噛み方
体の様子体がやわらかく、跳ねるように動く体が固まる、じっと動かなくなる
声や表情声は出ないか、遊びの声唸る、歯を見せる、白目が見える
噛む場面遊んでいるとき、興奮したとき食べ物やおもちゃのそば、触られたとき、抱っこされたとき
噛んだあとまた遊びに誘ってくる離れる、隠れる、その場を守ろうとする

「守っていた」だけのこともある

ごはんを食べる子犬と、離れて見守る飼い主

『犬育ての教科書』では、家族が5年間噛まれ続けてきたトイプードルのご家庭のお話をしています。

家族は「なめられている」と考えていましたが、よく見ると噛むのはいつも食べ物が絡んだときでした。

その子は家族を支配しようとしていたのではなく、大好きな食べ物を取られたくなかっただけだったのです。食事中はそっと見守るようにしただけで、翌週には一度も噛まれなくなりました。

子犬のうちから、食事中にお皿へ手を入れたり、くわえたものを無理に取り上げたりするのは避けましょう。

痛みが隠れていることも

特定の場所を触ったときだけ噛む、急に噛むようになった、という場合は、体のどこかに痛みや違和感があるのかもしれません。

こうした様子があるときは、ひとりで抱え込まず、動物病院やドッグトレーナーに相談してください。

よくある質問

甘噛みはいつまで続きますか?

歯が生えそろう生後7か月前後から、少しずつ落ち着いてくる子が多いです。

ただし、噛むと遊んでもらえる経験が続いていると、成犬になっても手を噛む癖が残ることがあります。「そのうち治る」と待つより、今日から関わり方を整えていくことをおすすめします。

成犬になってからでも学び直しはできます。「成犬になってからのしつけ直しは可能?」も参考にしてください。

おもちゃを渡しても、手のほうを噛んできます

動かないおもちゃより、動く手のほうが楽しいのは自然なことです。

おもちゃを床に置くだけでなく、人が持ってゆっくり動かし、おもちゃのほうが楽しいと感じられるようにしてみてください。それでも手に来るときは、興奮しすぎや眠気のサインかもしれません。

家具やスリッパを噛んでしまいます

届くところに噛まれて困るものを置かないことが、いちばんの近道です。

子犬が自由に動ける範囲をサークルなどで区切り、その中には噛んでいいものだけを置きます。「噛んだら叱る」より「噛めない環境をつくる」ほうが、子犬も人も楽になります。

子どもがよく噛まれてしまいます

子どもは高い声を出したり走り回ったりするため、子犬が興奮しやすい相手です。

子犬と子どもだけで遊ばせず、遊ぶときは大人がそばについて、おもちゃを使った遊び方を一緒に教えてあげてください。

まとめ

  • 子犬の甘噛みは、探索・歯の生え変わり・遊び・興奮や眠気など、その子なりの理由があります
  • 叱っても「なぜダメか」は伝わらず、かえって興奮させたり、手を怖がらせたりすることがあります
  • 噛んでいいものを用意し、手で遊ばず、噛まれたら静かに止める。遊びの始まりと終わりは人がつくります
  • 唸る、固まる、食べ物を守るといった噛み方は、背景を見直すサインです

甘噛みは、子犬が人と暮らすルールを学んでいる途中の行動です。

「噛ませない」ではなく、「噛まなくても満たされる」へ。

毎日の遊び方を少し変えるところから始めてみてください。

子犬の甘噛みでお困りですか?

噛む理由は、その子の月齢や性格、生活のリズムによって違います。

DogRelaxingでは、ご家族と一緒に遊び方や休ませ方を見直すご家族レッスンと、子犬同士の関わりの中で力加減や落ち着きを育てるデイスクール保育コースで、子犬の時期をサポートしています。

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「叱る」ではなく「育てる」考え方をもっと知りたい方は、『犬育ての教科書』もどうぞ。

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